ダンス・インテリジェンス
2008年12月号

元サラリーマン&企業家の還暦リーダーとドレスショップバイヤーのパートナーだからこそ気付くダンス界のイロイロ
伊藤明&宮本由紀子組インタビュー
11月初旬に発売したレッスンDVDが好調の売れ行きをみせる伊藤明・宮本由紀子組。そこで今回は、ダンス教室経営の実情や、ジャッジとしてコンペのフロアに立ったときに見えてきた現役時代とは違う重要ポイントなど、伊藤組ならではのおもしろ話をインタビューしました!
「音を外す」原因を作る日本のダンス環境!?

チョイスダンススタジオでは、「音楽を大切にすること」に力を注いでいますが、ダンス音楽に対する日本人の音感は、ダンスの上達に比例してよくなるのですか?

伊藤 ダンスは音楽を表現するための手段ですから、当然「音楽を大切にする」ということにこだわりますが、実際、それを教えることはとても難しいんです。音楽を大切にするという以前に、踊りが音に合っていない人がたくさんいるからです。
 先日、私もジャッジとして参加したD級競技会のスタンダードの決勝戦では、決勝メンバー全員が音をはずしていたので、決勝戦がやり直しになりました。アルファベット級のファイナリストクラスでも、音楽と踊りが合っていない人は珍しくありません。

宮本 日本では、多くのダンス教室で、音楽が教室のBGMになってしまっている現状があるんですね。そのことも、日本の生徒さんが音に疎くなってしまう原因かもしれません。

伊藤 日本のダンス教室にはたくさんの先生が所属して教えているので、1つのフロアに4組から5組のカップルが踊っています。当然、自分が踊っているものでない種目の音楽もかかりますよね。そこで、音楽が必然的にBGMになってしまうんです。
 海外では、ダンス教室自体が日本ほどアマチュアダンス愛好者向けのビジネスとして確立されていないので、たいてい、教師は教室オーナーだけなんです。ですので、一度にフロアでレッスンするのはだいたい1組、せいぜい2組なので、フロアも音楽も独占できる環境なのです。
 そういう違いは確かにありますね。

日本の方が競技ダンスがビジネスとして確立されているために音楽に疎くなってしまうというのは皮肉な現状ですね…。


ダンス教室は儲からない!

伊藤社長は、年間700万円をダンスのレッスン費用に使ってきたそうですね。

伊藤 はい。私が海外で学んだ素晴しいダンステクニックや哲学を今度は生徒さんに還元するために、ダンス教室をオープンしました。 
 でも、ダンス以外でもいろいろなビジネスをしてきた経験から言うと、はっきり言ってダンス教室はほとんどお金儲けにはならないんですよ(笑)。

それは意外です!
 今までダンスにたくさんお金を使ってきたのだから、これからはダンスでお金を稼げるぞ、というわけにはいかないんですか?


伊藤 私はダンスを教える側になりましたが、最先端のより磨き上げられたテクニックを海外から仕入れて生徒さんに還元するために、アマチュア時代同様、引き続き海外でダンスを習い続けます。
 海外のトップコーチャーからダンステクニックを仕入れるのは、本当に高価なんです。そんなよい仕入をたくさんするためには、ダンスで商売を「しない」くらいの意識でないと、続かないかもしれないと思いますね。
 勉強の必要がなくなると思うにしろ、金銭的な理由があるにしろ、競技選手引退後は海外留学に行かなくなる先生がいるのもわかります。


「目立つ」よりも「品格」重視 コンペドレスのオシャレ学


ジャッジされる側からする側になって感じたことはありますか?

伊藤 現役の競技選手のときは、2人のダンスのクオリティを高めることが第一だと思っていましたが、ジャッジとしてフロアに立つと、
「やはり衣装が大切だなあ」
と実感しました。

例えば、どんなドレスがジャッジの目を引きつけるんですか?

伊藤 やはりドレスもファッションなので、流行を取り入れたものを着ているとフロアで映えますね。
 コンペでは、アマチュア競技ダンサー数百組の中で、2〜3組「ああ、いいドレスを着ているな」と思う人がいます。
 デザインやライン、色合いがよく、その人の雰囲気と身体にぴったり合っているものを、いいドレスだと感じます。

数百組の中でたった2〜3組ですか。
 洋服文化の歴史が浅い日本人はオリジナリティあるドレス選びができないのでしょうか?


宮本 日本人は、コンペではとにかく目立つことを最優先しているように思います。
 「目立つ」とは、ドレス全体のデザインやその人に形・色があっているということなのですが、日本では「蛍光色」=目立つという図式のようで、とにかく蛍光色のドレスを着る方が多いですね。
 でも、蛍光色だらけの中に、1人だけシックな色のドレスの人がいると、とても目立ちますよ。
 数百組の中の2〜3組は、そんな蛍光色一辺倒の価値観に染まらず、自分らしいドレス選びを楽しんでいる方なのではないでしょうか。

伊藤 みなさんがドレスを選ぶときは、たいてい1着ずつゆっくり吟味していきますよね。
 でもそれだと、見たドレスの色が派手だったら、すなわち派手なドレスなんだ、と思ってしまいがちなんです。そこで、ドレスを選ぶときは、さまざまな色・デザインのドレスを複数並べてみることをオススメします。
 また、「ダンスが上手い人は何を着てもいいけれど、私はまだダンスだけでは目立たないので、ドレスで目立たなくては」と思う人もいますが、ご自身のダンスとドレスの雰囲気がマッチしないと悪目立ちになってしまいますので、色だけで判断するのではなく、自分の雰囲気や体型、顔立ちなどに合ったドレスを選んでください。

宮本 コンペのドレスは、特に年配の方々には「歳相応」は、逆によくないんです。とても老けて見えてしまいます。 ですので、私たちは、年齢よりも若めのデザインや明るめの色のドレスをオススメしています。

伊藤 それから、デモ・競技会・パーティーなど華やかな場だけではなく、通常のレッスンのときも、是非お洒落をしてほしいです。
 イギリスやイタリアなどヨーロッパでは、アマチュアダンス愛好者でも、スタンダードのレッスンのときには、男性はシャツやネクタイ、女性はエレガントなワンピースでドレッシーにキメています。それが、「ボールルームダンス」を踊るために必要なことであるという認識なんです。
 みなさんにも、コンペやデモできらびやかな衣装を着こなすためにも、是非、練習やレッスンの段階からお洒落であってほしいですね。
 ダンスを踊るシーンでは、みなさんにはいつもピカピカに光っていてほしいというのが、チョイス・ロンドン・ジャパンの願いなんです。


ところで、海外へのドレスの買いつけは宮本さん1人で行くのですか?
 モチロン、英語は堪能なんですよね。


宮本 海外への買いつけは、基本的には1人で行きます。
 というのは、2人以上で行くと、その分経費がかさみ、買いつけたドレスを日本で売るときに値段が上がってしまうんです。
 売買の交渉をするときは、通訳は使わず、直接ドレスメーカーの人と交渉しますが、英語力に自信があるわけではないんですよ。
 でも、仕事のやりとりのために使う英語はたいてい決まっていますし、イタリア・ドイツ・オーストリアなど、ヨーロッパ各国から集ったドレスショップのバイヤーたちと英語を共通語として話すのは、ネイティブスピーカーと話すよりもコミュニケーションが取りやすいんです。お互い外国人同士なので、簡単な英語をしゃべるためでしょうね。


還暦ダンサーによるレッスンDVD好評のワケ


11月8日に発売したレッスンDVDは競技ダンサーたちに好評のようですね。 特に、サークル指導者などから「とても役立つ」という反響が多いそうです。

伊藤 ダンスの技術向上に励むみなさんが、たくさんの技術解説の中から自分に合った理論を選ぶことができるようにと、私なりに新しい切り口から技術を解説しました。 たとえば、私は「バランス」を大切にしています。バランスが崩れると、筋肉が緊張して関節も固まり、音楽のタイミングが取りづらくなります。逆に、バランスが取れると、身体にロスがなくなり筋肉も関節もフリーになり、表現が自由にできるようになります。 それから、身体の1部分を固めると、他の部分も固まってしまうので、ホールドは、キープするホールドではなく、毎回変わっていくホールドです。結果的に、ホールドがきれいに保たれるんですよ。
 みなさんのダンス上達の一助になれば幸いです。

年齢にあわせて、踊り方や表現もその人にふさわしい形に変化しながら、美しいダンスを踊ること。そんな柔軟な考え方が、中高年ダンサーにウケているようですね。

伊藤 そうですね。ダンスはどんな世代の人も踊れるからこそ、その世代、その世代にぴったりのダンスを踊ってほしいと思います。
 年配の人は、せっかく人生を重ねてきたのだから、人生を表現できるダンスを踊ってほしいです。人生経験のない人が人生を表現できるダンスはできないのですから。


メディアにのぞむもの

DVDを発売し、日本のダンス愛好者に情報を発信する側になった伊藤組が、ダンス専門誌に限らずメディアに望むことはありますか?

伊藤 分裂しているダンス団体ほか、ダンス界のいろいろな状況に左右されず、常にダンサーの立場に立って中立の立場で、平等な意見を発信してほしいと思います。そして、みんなが知りたいことを発信してほしいと思います。それがマスメディアの役割だと思っています。


確かに、既存のメディアでは、まだまだ社交ダンス愛好者が「知りたい!」と思うトピックスの取材・発信が少ないように思われる。
 ダンス愛好者がより楽しいダンスライフを送ることができるような情報をどんどん発信していかなくてはと、編集部にハッパをかけてくれるようなインタビューであった。


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伊藤明(いとう あきら)
1945年生まれ。大学生のときにダンスを始め、
転勤などによる13年間のブランクを経て42歳で
再開。48〜50歳までアマチュアランキング1位。
07年6月の競技引退まで還暦ファイナリストと
して名を馳せる。その間、サラリーマンから
実業家に転身、97年にチョイス・ロンドン・
ジャパンを設立、07年にチョイスダンススタジオ
をオープン。人生もダンスも
「グッド・エンジョイ!」がモットー。


宮本由紀子(みやもと ゆきこ)
広島県出身。4歳からモダンバレエを始め、大学
では舞踏科でさまざまなダンスを学ぶかたわら
競技ダンス部に所属。卒業後、アパレルメーカー
に就職後、チョイス・ロンドン・ジャパンに
オープニングスタッフとして入社。直後から
伊藤明氏と組む。現在は定期的に渡欧して
ドレスの買いつけを行い、ドレスコーディネーター
としてショールームを支えるかたわら、
スタジオでレッスンも受け持っている。

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